赤レンガで働いていること自体がもう、「横浜」って感じですよね。配属先が決まって、「ここですか(笑)」って思いました。それこそ学生の頃から何度も遊びに来ている場所で、「横浜」どころか、もう「港・横浜」ですから。
財団の施設の中でも赤レンガ倉庫は特に観光地感が強く、桜木町駅から観光客の方々をかき分けて通勤しています。館内でも、ギャラリースペースで子ども向けの展示をしていると、子どもたちの和気あいあいとした声が聞こえてくるし、来館してくれるお客様も基本的に笑顔なんですよね。それはやっぱり、その場で働いている身としても嬉しいことです。
「横浜でアートを仕事にする」とは?
財団で働く仲間のリアルな声を紹介します
QUESTION 1 入職された経緯を教えてください
大学では作曲の勉強をしていて、演奏者としても人前に立っていたのですが、大学3年の頃にコロナ禍になって活動がゼロになったんです。そうした状況でようやく開いたオンラインコンサートの感想で、お客さんから「やってくれてありがとう」と、とても感謝された言葉に引っかりを感じて……。音楽やアートの場はいつでもあるべきだし、我々音楽家もこうした場を求める声にもっと気づくべきだったのではないかと反省して、制作の仕事に興味を持ちました。
そうしている間にもコロナは続くし、周囲にいる仲間も仕事がなくて暇をしているしで、この状況を根本から変えられる場所を求めたのが、財団を志望した決定的な理由です。横浜は自分の生まれ育った場所なので、自分の仕事で故郷を彩り、豊かにしてきたいという思いもありました。
QUESTION 2 現在の業務内容について教えてください
施設の貸し出しにかかわる貸館の業務と、SNSを中心とした広報の業務をメインに行っています。貸館では絵画や写真を展示するギャラリースペースを担当していて、様々なお客様がバラエティ豊かな企画を催しているのが、単純に見る側としても面白いです。
冬に赤レンガ倉庫前の広場に設置される、『アートリンク in 横浜赤レンガ倉庫』というスケートリンクも担当業務の1つです。スケートリンクを囲む壁一面をアートで彩るのが『アートリンク』の特徴で、そのアーティストの選定も担当しています。正直、音楽畑出身で美術系は分からないことだらけですが、知らない中でも面白さを見つけることが得意でもあり、自力で調べたり先輩職員に相談したりしながら楽しくやっています。
QUESTION 3 これからどんな仕事を手がけていきたい?
受け手が能動的でなければ、音楽やアート、ダンス等に触れにくいという状況を改善したいと考えています。海外には、当然のように路上でライブやパフォーマンスが行われている街がありますよね。そうした状況が、子どもたちがアートに踏み出すきっかけになったりすると思うので、アートを自由に披露したり、鑑賞したりできるスペースを横浜に増やしていきたいです。
例えば流行したストリートピアノは、非常に意義のある施策だと思うものの、ピアノを弾ける人に限定されてしまいます。であるならば、歌でもライブペインティングでもダンスでも、あらゆるアートを披露できる場所があっていいのではないか? 時々プロの方が来て、本物のパフォーマンスを見られたりしたら最高ですよね。
QUESTION 4 働く舞台としての財団の特徴は?
アートというくくりはあるものの、その中でも驚くほどの多様性があります。様々な施設があって、それぞれの専門の職員がいるかと思えば、僕自身もそうですけど、事務方にも専門教育を受けている職員がいたりして、様々なバックボーンの人たちで構成されている。まだ駆け出しで、業務の内外に限らず分からないことがたくさんあるのですが、それでも「誰かが絶対に教えてくれる」という安心感がありますね。
また、僕が担当する『アートリンク』のように、思いがけず大きな仕事を任せてくれる懐の深さがあります。だからアートが好きなだけではなく、アートでやりたいことがある人にとっては、とてもやりがいのある職場ではないでしょうか。
QUESTION [EXTRA]
「アートリンク」のアーティストは
どのような方法で選んでいるのですか?
日常的なアート系コンペの結果検索と、休日のギャラリー訪問の2つが、主なリサーチ方法です。複数のアーティストがスペースを分けて、アートが展示されているギャラリー等によく顔を出しています。他にもSNSで調べて直感的に気に入った作家さんからフォロー&フォロワーを辿るなどして、できるだけ情報を増やすように心がけていますね。
ただ、美術を専門に学んできたわけではないため、自身の選定にはどうしても不安が生じます。そのため、コンセプトやキャラクター等、裏付けになる何かを持ったアーティストを選ぶことが多いかもしれません。先のような不安も払拭しやすいですし、お客様に説明する際に話を深める材料になるのが、その理由です。