CROSSTALK

同期3人のフランクな会話を通して
エデュケーターの仕事を深掘ります

座談会の様子

多様な職種で成り立つ財団ですが、なかでも珍しいと言われるのがエデュケーターです。

ここでは、同じ2023年に入職して現在もエデュケーターを務める3人の座談会をお届けします。

エデュケーターはどんな仕事なのか? 館ごとに異なる役割や働き方にもご注目ください。

座談会メンバー

箱山 朋実

横浜市民ギャラリー

箱山 朋実

アトリエ講座やインターン、ボランティア活動などの教育普及事業を担当。教職員経験があるほか、銅版画家の顔も。座右の銘は「つくりながら、手で考える」。

どんな人?

大山

物事に真摯に向き合う
会うと安心する人

瀧口

何事にも真面目で真剣
頼りになる人

大山 元菜妃

横浜市民ギャラリー あざみ野

大山 元菜妃

小学生以下の子ども、個別支援学級、教員対象の事業や、子どものための展覧会企画などを担当。愛読本は為末大「走る哲学」。

どんな人?

箱山

やさしさあふれる
聞き上手!

瀧口

いつもやさしく
包み込んでくれる人

瀧口 桃

横浜美術館

瀧口 桃

鑑賞プログラムを中心に学校連携事業、館内のアクセシビリティに関する取り組みなどを担当。座右の銘は「In the end, everything is a gag.」

どんな人?

大山

小さな変化に気づき
柔軟に学び続ける人

箱山

会うと元気をもらえる
まっすぐな人!

エデュケーターって、どんな仕事?

箱山 箱山

私は横浜市民ギャラリーでエデュケーターをしていて、今年で4年目です。現在は大人向けと子ども向けのアトリエ講座や展覧会のボランティア、大学・大学院生のインターンシップ、地域の社会課題にアプローチする事業などを担当しています。

直近では「横浜市こどもの美術展」が迫っているので、ここ数日はその準備で忙しい!

大山 大山

私は横浜市民ギャラリーあざみ野でエデュケーターをしていて、実は私も4年目です(笑)。

瀧口 瀧口

3人とも同期だからね(笑)。

大山 大山

現在は、小学生までを対象にしたアート講座の企画と、個別支援学級・特別支援学校・養護学校を対象とした造形活動、新進アーティストを紹介する小展示の企画などを担当しています。

直近だと夏休み期間恒例の「あざみ野こどもぎゃらりぃ」が開催間近で、今まさに佳境、佳境、佳境! あとは学校にアーティストを派遣する「プラットフォーム」事業のいくつかも私の担当です。

箱山 箱山

プラットフォームね! 私も担当してるのに言い忘れてました(笑)。一般的に“子どもの美術展”は“子どもが制作した作品”がメインになることが多いけど、「あざみ野こどもぎゃらりぃ」はアーティストの作品を展示するのが珍しいですよね。

大山 大山

「みて・つくって・体験する」というテーマを大事にしていて、子どもたちが小さい時からアートやアーティストに出会うことで、いろいろなものを見る力や創造する力を養えるのでは? と考えています。アーティストの方々に“子どもたちが来る場での作品展示”を前提に参加いただいているのも、他との違いかもしれません。

箱山 箱山

アーティストや企画側の「子どもたちに届けよう」という思いが感じられて、私は毎回元気をもらっています。大山さんみたいに“展覧会の企画”も担当するというのは、エデュケーターの仕事を知らない人が聞いたら驚くでしょうね。“講座の企画”は誰しも想像がつくと思うけど。

大山 大山

私もエデュケーターという仕事が、展覧会の企画からアーティストの選定まで行うとは思ってなかった(笑)。

箱山 箱山

一方で、瀧口さんはすごく大きな職場で働いているのが、私たちとの違いですよね。

瀧口 瀧口

私は横浜美術館でエデュケーターをしているのですが、配属された当初は美術館が休館中だったため、プログラムごとに組まれたチームの中でいろいろなことをやっていました。

改修後の美術館に引っ越す準備だったり、アウトリーチの視察に行ったり、横浜トリエンナーレを横浜市の生徒たちに見に来てもらうためのプログラムをやったり。2年目からは小学生までの子どもたちを対象とした「フリーゾーン」というアトリエプログラムを手がけるようになって……あ、あとプラットフォーム事業は私も担当しています。

大山 大山

エデュケーターがプラットフォームを担当するのはどの館も共通ということですね。学校にアーティストを派遣するのは、まさしくエデュケーターの仕事という感じがします。

同じ職種でも館によって仕事が異なる?

箱山 箱山

そういえばコロナ禍が明けたくらいの時かな? 横浜美術館に所用で立ち寄ったら、たくさんの子どもたちとボランティアさんの真ん中で瀧口さんがインカムを付けて「フリーゾーン」を仕切っていて、「かっこいい〜」と思った記憶があります。

瀧口 瀧口

うれしい。今も毎週のようにインカムを付けてますよ(笑)。

滝口さんのお仕事風景
(可能であればご提供)

箱山 箱山

私が市民ギャラリーで担当している「ハマキッズ・アートクラブ」は講師や参加人数やテーマが決まっているけど、「フリーゾーン」って文字どおり何をやっても自由なのが特徴ですよね。あざみ野にも横浜美術館にも「フリーゾーン」があるけど、担当していて難しさは感じないですか?

瀧口 瀧口

実は学生のころに横浜美術館でインターンをして、「フリーゾーン」のプログラムの1つである「子どものアトリエ」を見たことがあったんです。それで「美術館で催される教育普及目的の造形的なプログラムってこんなに本格的なんだ」と誤った認識を持ってしまって……。

大山 大山
箱山 箱山

(笑)

瀧口 瀧口

後に一般的な美術館や博物館について学んだところ、どうやら“あそこ”は特殊らしいぞ……と(笑)。ただ、すごく特徴的でユニークな取り組みだとわかったことで、やりがいは強まりましたね。

大山 大山

私は前職で美術館の教育普及をやっていただけに、就活時の下調べで横浜美術館のアトリエを知ったときは震えました。その時はあざみ野への配属が決まっていなかったので、入職に際しては「やるしかない」という気持ちで臨みましたね。

箱山 箱山

だからか、私たちの館はどこも講座が充実していますよね。私も最近になって子どもの講座をやるようになったけど、保護者の方への説明が特に大変だなと感じます。

内容をわかりやすく伝えるのもそうだし、真剣に取り組んでいる子どもを写真に収めたい親心を「今は子どもたちが集中しているから控えてください」っていさめたりするのもニュアンスが難しい……。

それで、そんな悩みを担当講師の方に相談したら、「あざみ野の大山さんを見るといいよ! DJ力ハンパないよ!」って言われたんです。

瀧口 瀧口

DJなんだ(笑)。

大山 大山

DJ OYAMAでやらせてもらってます(笑)。

大山さんのお仕事風景
(可能であればご提供)

箱山 箱山

大山さんはマイクパフォーマンスが本当に上手! 私みたいに講座をこなすだけでも悩むことが多いのに、横浜美術館が再開してからは別チームでまったく違うことを担当するようになった瀧口さんは本当に大変だったろうなって思います。

瀧口 瀧口

昨年から鑑賞チームに移ったんですけど、私はもともと造形と美術教育が専門で「作ること」を得意にしてきたので、「これからは作りませんよ」と言われたのは焦りました。

それで「イチから勉強せねば」と一念発起していたところ、異動後1週間でいきなり「ギャラリートークで喋ってください」と言われることになって……。鑑賞について話すなんて、まったくやったことないのに!

大山 大山

瀧口さんを信頼しているからこその無茶振りだと思いたい(笑)。

瀧口 瀧口

ただそうしてチームが替わってやることの幅が広がったことで、美術館全体のありようを見つめ直すきっかけになりました。作品があって、それを展示して、研究して、解説して、教育があってというサイクルの中で、常に作品をベースに考える。脳みその動き方がけっこう変わった気がしますね。

あと、横浜美術館がリニューアルオープンに際して「あらゆる人を歓迎する、どんな人にも居場所がある」と標榜していて、その一環である“アクセシビリティ向上”の担当にもなりました。アートとアクセシビリティについて勉強するのはとても楽しいです。

箱山 箱山

横浜美術館は版画や彫刻、絵画、陶芸といった多様な制作設備を備えていて、特にいろいろな人たちが訪れる館だから、アクセシビリティもより重要になりますよね。

瀧口 瀧口

来館者も多様なら、職員側も多様なのが横浜美術館なんですよね。エデュケーターだけでなく学芸員や経理担当、庶務担当といろいろな職種の人たちがいて、施設の大きさを感じます。

箱山 箱山

一方で市民ギャラリーは事業数に対して学芸員やエデュケーターの数が少なくて、入職してすぐの私はびっくりしました。もちろんチームが小さいことにもメリットはあって、意思疎通が早くて進行しやすかったり、自分のアイデアが形になりやすかったりするのですが。

大山 大山

あざみ野も小さいチームだけど、事業数は市民ギャラリーよりさらに多いかもしれない。

箱山 箱山

ポジティブな言い方をすると、あざみ野は少数精鋭でめちゃくちゃ頑張っている(笑)。私は1日1講座が限界だと思っているけど……。

大山 大山

あざみ野は午前と午後で2回が普通(笑)。

箱山 箱山

超人過ぎる! 私たちってエデュケーターという同じ職名ではあるけど、館によって少しずつ仕事が違うんですよね。共通部分があるとしたら、子どもであれ大人であれ、お客さんの反応を直に感じながら仕事をするところかな。

瀧口 瀧口

あとは美術館のサポーターさんとかインターンとか、立場や組織が異なる方々と一緒に仕事を成し遂げるところも、エデュケーターで共通していると思いますね。

入職の前と後で感じたギャップとは?

箱山 箱山

これまでのキャリアでは中学校や大学で“教える”ことがメインだったこともあって、財団の募集要項で「エデュケーター」という職種を見たときも“教える場を整える仕事”を想像していたんです。

そしたら“教える場を整える仕事”は間違いではないものの、準備段階における事務作業の多さにびっくりしました。「なるほど、これが市民から税金をいただいて運営している公立の施設ということか!」って。

他にも、小さい館だからこその業務の幅の広さにも驚きました。展覧会をイチからつくりあげるなんてやったことがないから最初は本当に何もわからなくて、仕事のスピードも遅かったし、すごく打ちひしがれました(笑)。

そういう入職前と後で感じたギャップってありますか?

瀧口 瀧口

さっきも言ったとおり横浜美術館は手がける仕事の範囲が広いので、チーム次第でジョブローテーションみたいなことが発生するのには驚かされました。同じ館の中で同じエデュケーターという肩書きで働いているのに、仕事がまったく変わってしまう。

そうやっていろいろな仕事を少しずつ覚えている立場なので、入職初年度から即戦力として働いている2人を見たときは、横浜美術館への配属だったことに安堵しました。「どうしよう、私が市民ギャラリーに行ってたら何もできないところだった」って(笑)。

大山 大山

あざみ野も市民ギャラリーも、職員が少ないからどうしても即戦力であることが求められるんですよね。

箱山 箱山

そのぶんOJTで本当に丁寧に教えてもらえるとはいえ……やっぱり教えてくれる方も忙しい。だから財団のエデュケーターには“自分で考えて調べながら進める力”が求められるかもしれない。「自分で走る力」というか。

瀧口 瀧口

そうですね、あとは自己修正力も必要。

箱山 箱山

「自分で走る力」の表現に倣うと、大山さんは入職直後からトップスピードで走り抜けているイメージが……。

大山 大山

もうね、私はたぶんギャップに気づけてないまま来ちゃっていて(笑)。

箱山 箱山
瀧口 瀧口

(笑)

大山 大山

4年目になってようやくいろいろなことに気づき始めた感じです。「この事業ってこんなに量があるんだ」とか「立ち止まって考えたら、この事務作業多すぎるよな」とか、経験を積んで判断力が養われたことで、抱えている仕事を客観視できるようになったのかな? なんか最近の私、不思議と冷静です(笑)。

エデュケーターとしての目標は?

箱山 箱山

ここまで話してきたように、いろいろな仕事を含んでいるのがエデュケーターの面白さですよね。オールマイティになんでもこなすことが求められるかと思えば、専門性を高めることが求められもする。私たち3人だけでもこんなに業務内容が違うのに、財団にはもっとたくさんのエデュケーターがいて、それぞれがまた異なる仕事をしているという。

そうやっていろんな働き方ができるから、将来の目標を定めるのも難しいですよね。別の館に異動になって、思いも寄らなかった仕事を任される可能性も十分に高いと思うので。

瀧口 瀧口

入職当初は、早く施設に貢献できるようになることが目標でした。自分で企画したプログラムを実現したり、より多くの人に豊かな経験を提供したり。でも経験を積めば積むほど、狭く深いピンポイントなやりたいことが増えていて……今は「将来こうなりたい!」と一概に言えなくなっているのが、正直なところです。

箱山 箱山

それって、端的に成長したからだと思う!

大山 大山

私の目標は、館やアートと接点のない人たちについても考えられるようになることかな。「子どものためのプログラム」という事業を例に挙げると、実際に来てくれた子どもたちに「いい顔になって帰ってほしい」と思うのは当然として、子どもがいなかったり、子育てと縁がなかったりする人たちにも、そうした事業を支える価値を感じてほしい。そのためにアートと教育を開いていくことも、エデュケーターの大事な仕事だと考えています。

箱山 箱山

その考えは、今年度の「子どものためのプログラム」のチラシに現れてますよね。どういう思いでこのプログラムをやっているのか、どういう風に子どもたちに育ってほしいと思っているのかが伝わってきて、「こういう事業を展開している横浜市も素敵だな」とポジティブな気持ちになりました。次のチラシで真似させてもらおうと思います(笑)。

大山 大山

ありがとう(笑)。そういう箱山さんのエデュケーターとしての目標は?

箱山 箱山

実は私は最近、「安心感」というのが大事なキーワードになっていて……。この前、絵画作品を見ながらみんなで1本ずつ詩を書いて繋げていく「連詩」のワークショップをやったんですけど、本当に素敵な詩ができあがったし、詩作を通じて参加者同士で素敵なコミュニケーションが生まれて、心から「いい授業だったな」って思えたんです。そしたら参加者の方から「辛いことがあって参加を迷っていたけど、ワークショップのおかげで久しぶりに苦しい気持ちから解き放たれて、楽しい時間が過ごせたことに感謝します」というメールをいただいて、その言葉にすごく心を動かされたんですよね。改めて、生活の中で「安心」であることの価値を感じたというか。

だから、学びを生み出すことも大事だけれど、そこにいるだけで安心できる場を作れるエデュケーターになりたいと、今は思っています。

瀧口 瀧口

箱山さんはすでにそうなれていると思うけどな。

箱山 箱山

本当? うれしい! こうやって励ましてくれる2人が同期で本当によかった〜!

——同期3人の仲の良さのおかげか、収録現場にはずっと和気藹々とした空気が流れていました。

同じエデュケーターでも館によって仕事はさまざま。それでも人とアートをつなぐ思いは共通しているようです。

その仕事の魅力、伝わったでしょうか?

エデュケーターの1日

財団で働くエデュケーターは、いったいどんな1日を送っているのか?

横浜市民ギャラリーの箱山さんをモデルに、「講座のある日」と「講座のない日」のタイムスケジュールを紹介します。

講座のない日のタイムスケジュール(箱山朋実編) 講座のある日のタイムスケジュール(箱山朋実編)